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「視聴回数爆上がりしそうだろ。俊一、しっかりと撮影しろよ。中野、ちゃんとスピード合わせてチャリ漕げよな。よし、二人共行くぞ」
尚人が北側に一歩踏み出すと、足元からポキッという音が鳴った。
「ん、何だ」
尚人が足元を見やると、そこには一本の小枝が落ちていた。
「なあ尚人。この枝、不思議な形だな」
俊一が言うように、尚人の足元にある枝は矢印のような形をしていた。そして、その矢印は今まさに尚人が向かおうとした方向とは90度違う方向を指していた。
「ああ、矢印みたいに見えるな。これも運命、この枝の指し示す方向に走ってみるか」
「確かにそうかもな。いっちょ、このお枝様の言う通りやってみようぜ」
「お枝様のご利益があるかもしれないしな」
こうして尚人と俊一、中野の三人は、道端に落ちていた木の枝に導かれるように当初の計画とは90度違った方向に向けて目線を向けた。歩行者天国には、多くの人が行き交っている。
よし、やるぞ、と尚人は心を決めてから、大きく息を吸い、胸いっぱいに溜めた空気を一気に吐き出しながら叫んで、走り出した。
「みんな逃げろ————っ。後ろから来てるっ。殺されるぞ————っ」
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