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大きな御神木が聳える茨城県にある古い神社。訪れるものも少なくなったこの神社の境内を、白髪頭の小柄な老婦人が一人、竹箒で掃き掃除をしている。広葉樹が来年の芽吹きのために今年の葉を落としているこの季節、老婦人が毎日掃き掃除をしても追いつかない。それでも、この老婦人は毎日誰に言われるでもなくやってきては、竹箒を忙しげに動かしている。
「今日もりんばあちゃん来てるね」
上が白、下が赤の袴姿で髪の毛を肩甲骨のあたりで結っている、切長な目をした女の子が隣に座る男の子に話し掛ける。
「うん。毎日毎日掃き掃除してくれて、本当にありがたいっすね。何もしないとあっという間に一面落ち葉で覆われちゃうっすから」
上が白、下が青の袴姿で、髪の毛を無造作に流した、クリクリと大きな瞳の男の子が応える。
「ねえ狛伎、私、りんばあちゃんに御礼をしたいな」
「そうっすね、僕も賛成っすよ、獅子乃」
獅子乃と狛伎は、この神社の神様に竹箒のばあちゃんこと香枝珠りんの願い事を叶えて欲しいとお願いに行くことにした。
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