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――ふ、と重いまぶたを開ける。いつの間にか眠っていたようだった。記憶のなかで嗅いでいたはずの酒の匂いも、上陸部隊の騒ぎ声も、誰かが吹く甲高い口笛も、すべてが消えていた。代わりに、ほぼ骨と皮だけになった仲間と、鬱蒼と茂った樹々と、人の背丈くらいに伸びた葉が、目の前に広がっている。陽射しは容赦なく自分たちを刺してくるというのに、目の前の風景には色がない。
暑い、喉が渇いた、腹が減った――。
どれも呟けぬまま、樋口はじっと俯いていた。ジャングルで敵からひっそりと身を潜め、敵と戦う代わりに飢えに耐えている兵士――。大本営の人間が聞いたら、間違いなく顔の原形が分からなくなるまで殴られるだろうと思った。
だが肝心の食料がなければ、このジャングルすら抜けることはできないし、ましてや交戦することなどできやしない。どうやら陸軍が食料を送ってくれているようだが、それもまだ届いていなかった。――食料を送ろうとしても、待ち伏せていた米兵がすべてそれを沈めていたというのは、終戦後、帰国してずいぶん経ってから知ったことだった。
――上陸したあの日、死ななかっただけでもかなりの幸運だった。
ガダルカナルにいる米兵の数は二千、とみた大本営は、上陸部隊を九百ほど送った。半数以下でもじゅうぶん戦えるし余裕だろう、という考えからだったようだが、実際の米兵の数は一万三千だった――らしい。そして日本の上陸部隊として送られた九百のうち、一夜にして八百近くが死んだ――らしい。出撃の前日に、「ツラギも攻めていいか」と聞いていた一木大佐の部隊は玉砕、一木大佐は軍旗を焼いて自害した――らしい。すべては終戦後に知った。
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