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ハッと目を見開いた。すると、玄関のチェーン越しに元彼が笑顔で立っていた。
「あれ!どうしちゃったの?」
「いや〜、忘れ物しちゃってね」
「いまさら!?」
元彼と言っても何年も時間が経っている。彼の忘れ物らしきものはなかったけど、、、。
私は仕方なしに玄関を開ける。彼が忘れた物に興味があった。
「押し入れ、押し入れと、、あれ!?こんなところに出てるじゃん!」
と彼が見つめる先には先程私が乗っていた金魚のダイエット装置があった。
「これはお母さんがくれたダイエットの装置だよ」
私は半分呆れながら彼を見た。結構以前に別れたのにまたヨリを戻したい手段だろうか?
いや、彼はそういうことをするタイプではなかったはず。
「これ、俺がマキにプレゼントしたんだよ」
私は驚いて彼を見た。彼もこちらに微笑み掛けてくれている。
でも彼がこれを贈ってくれたという記憶はない。
それに彼の名前がどうしても思い出せない。
「ねえ、、、その金魚装置なんて何に使うの?それにくれたんだったらなんで持ってこうととするの!?」
金魚の装置に未練はないはずだけど、いざ持ってかれると何だかとても重要な物のような気がしてきた。彼からのプレゼント、、プレゼント、プレゼント、、。
私はハッと思い出した。この金魚をくれた彼の名前は確か、、。
彼はよーく見るととてもたくさんの皺があっていつまでもいつまでも微笑みを絶やさずこちらを見ている。
「金次、、、、?」
私はとても長い夢の中から覚めたようだった。
「マキ、お帰り。長いこと夢を見ていたようだけど、いつまでも側にいるからね」
金次はシワだらけの顔をくしゃくしゃにしながら涙を流していた。
おわり
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