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家族の仲は良好だそうなので、今回はちょっとした報連相の抜けがあっただけだろう。問題は学校の方だ。友人に裏切られたようだと語る少女の声を聞きながら、私は昔のことを思い出していた。私もそうだった。友人だと思っていたのに、信じていたのに、それが原因で私は命を落としたのだ。
「あぁ、もう。なんか、なんか嫌だな。よく分かんないけどもう困っちゃって嫌だな」
不格好に歪められた口元は震え、目には涙が浮かんでいた。
「ごめんね、変な話聞かせて。貴方みたいな貴族には全然分からない世界の話だったよね。つまらない愚痴を聞かせてごめんね」
「少し分かる。私も友人だと思っていた者に裏切られた。詳細はあまり覚えていないが、そのせいで私は死んだのだ。恐ろしくなって都を離れたはいいが、行くところもなくずっと彷徨っている。亡霊のように。……亡霊なのだが」
「そうなんだ……。……ねえ、貴方、行く当てのない浮遊霊なら私のところに来ない? 似たもの同士、寂しいもの同士、身を寄せ合ってさ」
「汝のところに? 私が?」
「仕事に慣れて来たから、もっと色々できるように式がほしくて。貴方、悪い人じゃなさそうだし。私に声かけてくれたしさ」
涙を拭って、少女は「どうかな」と私を見る。式とはつまり、式神だろうか。陰陽師が従えている物の怪の類のようなものだという話を聞いたことがある。少女は私のことを使役してやろうと言うのだろうか。このような小娘が従四位上頭左大弁である私の上に立つと言うのか。
私が黙ったままでいると、少女は小さく息を吐いてブランコから立ち上がった。鞄を持って帰る姿勢である。
「駄目か。忘れて。話聞いてくれてありがとう」
私は慌てて立ち上がり、少女の前に回り込んだ。
「待て。その、式というのはつまり、私を従えるということか。汝のような庶民の小娘が、私を子分にすると」
「そうだけど。でも、私はもっと対等な関係でいたいと思う。確かに主と式には主従関係が伴うけれど、それはあくまで形式的なもの。仕事のパートナーって考え方でいいんじゃないかな」
「仕事の、パートナー……」
「千年を経ても強力であり続ける貴方の霊力を私の仕事に提供してくれるのであれば、私は貴方に衣食住を提供しましょう」
「居場所をくれるのか。私に、この世に留まる理由を与えてくれるのか」
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