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【詞書 とある貴公子の歌】
ひさかたの 雨夜に羽振る きらめきの
きみ慕いつる 鶴渡るかな
頭左大弁藤原宣忠
◆
その日、私は全てを失った。ほんの一瞬のうちに、何もかも失った。愛する人も、家族も、友人も、全て。
これが孤独なのだと知った。
手元に残ったのは汚れや破れで内容の読み取れない紙切れだけだった。何か大切なことが書いてあった気がするが、今となっては思い出せない。
『十五日、□□に会う。□刻に□□の家』
虫食いのメモ。自分の筆致ではないこのメモは、私にとってどれほど大切なものだったのだろう。
行く当てもなく、途方に暮れた私はただただ彷徨い続けた。それこそ亡霊のように、ふらふらと。
もうこのまま消えてしまおうか。そう思った私の前に、君は現れた。差し伸べられた手は細くて頼りなかった。けれど、とても温かかった。
これは誰かが見た景色。
星の巡る街が歌う長い歌の、ほんの一節。
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