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会話
「こんにちは」
二階の窓の下から再び挨拶をした青年の顔は、少年のようなあどけなさが残る顔立ちだった。体はそれなりに大きいようだが、顔だけを見れば高校生ぐらいのように感じられた。
「あなたは、どなた?」
気になった少女は、青年に声をかけた。
「僕はあなたと少しだけでいいから、お話ししてみたいと思っていた者です。ずっとあなたのことが気になっていたもので」
少女はとても驚いた。これまで少女に気付く者はだれもいなかったのだから。
「わたしがここにいることを、知っていたの?」
「もちろんです。だってあなたはその」
青年はそこで言葉を止めた。もごもごと口元を動かしているだけだ。
「その? なぁに?」
たまらず少女が聞くと、青年はわずかに視線をそらしながら答えた。
「あなたはその、とても、きれいだから。だからずっとお話ししてみたいと思ってました」
青年の顔はみるみる赤く染まっていく。
「わたしが、きれい……?」
知らない国の言葉を聞いているようだった。
『あなたはきれい』
自分がきれいかどうかだなんて、考えたこともなかった。いつだって外を眺めていただけだったのだから。
「だからその、あなたと一度お話ししてみたいと思ってました。……って、いきなり失礼ですよね! すみません……。でももしも、お嫌でなければ、僕と少しずつ話してみませんか? 本当に少しずつでいいので」
「少しずつ……」
確かにいきなりではあった。けれど青年は悪い人には思えなかった。
「少しだけ、少しずつでいいなら」
少女が小声で答えると、青年の顔は一気に輝いた。
「ありがとう! すごく嬉しいです」
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