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青年は、『神永 透也』と名乗った。
「あなたはそこからずっと、外を見てましたよね。僕もあなたを見ていたんです」
「そうなの?」
青年を見た覚えは、少女にはなかった。
「ええ。最初はただきれいだなって。でもだんだんと、あなたのことをもっと知りたくなって。だから今日は勇気を出しました」
神永透也は頬を赤く染めたまま、恥ずかしそうに話している。いつ見初めたのかは分らないが、少女に好意を抱いてるのは間違いないようだった。
「ごめんなさい。わたし、あなたのこと知らないわ。あなたを見た記憶がないの」
自分の気持ちをまっすぐ伝えてくれる神永に、少女は嘘をつきたくなかった。
神永はかくんと肩を落としてしまった。
傷つけてしまったのだろうか?
「そ、そうですよね。すみません……。今日はもう帰りますね」
神永は逃げるように背を向けた。
「待って!」
少女は慌てて神永を呼び止めた。
「もう少しだけ、お話ししましょう。あなたのこと知りたいの。あなたはわたしを知ってるみたいだけど、わたしはまだ名前しか知らないもの」
神永はゆっくりと、少女のほうへ顔を向けた。喜びに満ちた顔だった。
「ありがとう!」
神永と少女は、毎日少しずつ話していくことになった。
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