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少女
ゆるい坂を登りきったところに、しなびた洋館が建っている。洋館を守るように、庭には草花が咲き乱れていた。
二階の窓から、少女が外を眺めているのが見える。少し物憂げに、けれど幸福そうに微笑みながら。少女はいつだって外を見ていた。晴れの日も雨の日も、風の日も雪の日も。
洋館の前を人が通るたび、少女は嬉しそうに顔をほころばせるが、人々は少女に気付くことはない。そこには何もないと言わんばかりに素通りしていく。
少女はそれでも外を見つめていた。
まるで何かを待っているように──。
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