これから

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「先生の誕生日に、約束していた料理をご馳走して……あ、それがロールキャベツなんですけど。それで、その時から付き合うことになったんです」 真野と泰輔は実家に1泊して、翌日一緒に帰ってきたところだった。真野とはオレの家で夕食を食べて、真野と付き合うことになった経緯を教えてもらっていた。 「そうか……その時、その……どっちから言ったんだ?」 「あーえっと……一応ボクからです」 「やっぱり、お前に言わせちゃってたんだな……」 「え、や……でも、先生も先に言われちゃったって……タイミング的にたまたまボクが言うことになったんですけど、なんか勢いで言っちゃったたんで……」 告白の経緯を聞いて、やっぱりと思いながら自分の不甲斐なさに落ち込む。そして、それを悟られてフォローされて余計、自分のダメさっぷりに打ちのめされそうになっていると「あ、あの……先生って、高校生の頃のボクにも好意を持ってくれてたって聞いたんですけど……」と、とんでもない話が降ってきた。真野へ視線を向けると「へへっ…」とやや照れたように笑っていた。 「んーまぁ……そうだな。お前の雰囲気というか、とりまく空気というか……そういうのが居心地が良くて惹かれていたよ。だけど、立場上それ以上のめり込まないように、気持ちを断ち切ってもいた。自分の生徒相手にそんな目で見ていたなんて気持ち悪いよな……」 「そんなことないです!ボクは嬉しいです。ボクだってずっと先生のことは特別だったんです。あの時はわからなかったけど、卒業してからも何故かずっと頭の片隅には先生がいました。だから、初めて居酒屋で声をかけてくれた時もすぐに先生だって気づくことができた」 「でも、真野はゲイではないんだろ?」 「……そうですね。ボクは先生以外の男の人はたぶん無理です。でも先生はすっごくそこ、気にしますけど、逆にゲイではないのに先生のことは性別を越えて好きなんですよ。そっちの方がすごくないですかっ?ボクのためって言いながら、ボクの気持ちを無視することは、先生のエゴでしかないんですからねっ!!」 「ご……ごめん」 そうだ、最近も似たようなことを考えていたような気がする。確か……母さんの思いとオレの思いについて。母さんがオレのこと考えることも、オレが真野のことを考えることも結局はエゴに過ぎないと…… いつだったかな……母さんとはしばらく会ってなかったはずだけど…… 「せんせ……?先生は、ボクと付き合ってる記憶はないけど、でもずっと好きだったってことですよね?今もボクのことは好きって思ってくれてるってことですよね?」 じっーっと見つめて、真野が聞いてくる。 「あぁ……遠い昔に封印したお前が、目の前にいてオレの事を好きだと言ってくれている。情けないけど、真野に会ってからずっとドキドキしっぱなしでおかしくなりそうだよ……でも……付き合ってるなら、手を出してもいいんだよな」 真野の体を引き寄せて背中に手を回す。まだちょっと遠慮がちに力強く抱きしめられない自分に情けなく感じていると、ぎゅっと後ろに手を回されて力強く抱きしめられ、それに答えるように抱きしめ返す。 「ボクだって、ずっとしたかったの我慢してました」 少し身体を離して成長して少し凛々しくなった真野の頬に軽く触れる。その上から、真野が手を重ねてきて、ゆっくり顔を近づけて唇を重ねた。ほんの一瞬触れて離す。すぐ近くの真野と目が合う。あれ?なんだかデジャヴ…… 「最初の時と同じですね」とクスクス真野が笑いながら話す。 あぁ……そうだった…… 「あの時もこれだけじゃ済まなかったよな」 「え、先生、おも……」 最後まで言い終わる前に、また真野の口をふさぐ。はじめての時をなぞるように、深く舌を絡ませた。 翌朝、目を開けるとすぐ隣に真野が寝ている。 あぁ……そうだった……真野がいる…… まだ寝ている真野を抱きしめる。 「ん……せんせ?おはよう……ございます……」 「ただいま……ごめんな。今年のお盆休み、潰しちゃったな」
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