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少女姿の怪異が、真っ昼間から無人駅のベンチで座っている。ニャン七郎のように人懐こくて協力的な怪異なのか。長子のように最初は上から目線だったが、今は馴染んでいるような怪異なのか。
話している感じでは敵意がなさそうだが、正面切って挑んでこないのもいるので、油断は出来ない。
宿のチェックインはまだ先なので、怪異を相手にする時間はあったが、用心のため嘘を言ってその場を逃れることにする。
「じゃ、急いでいるので――」
「そんな風には見えないけど」
間髪入れずに切り返す少女は、上目遣いにミコトを見て、口角を吊り上げる。この少女らしからぬ表情は、人間の姿に化けている怪異の表情そのものだ。
「何か言いたいことでもあるの?」
「言い方……。傲慢な人間は、いくら化粧をしていても、言葉に出るよねぇ」
「怒っているみたいだけど、何か人間にされたの?」
「された? 一杯あるよ」
どうやら、人間に恨みのある怪異のようだ。トートバッグに目を落とすと、ニャン七郎も長子も成り行きを見守っている様子なので、警戒は継続する。
「例えば?」
「最近は、祓い屋に追われている」
祓い屋と聞いて、マサシを連想した。I町は彼の家から遠いので、ここまで足を伸ばしている可能性は低そうだが、怪異を祓う職業に就いている人間は少ないので、ゼロではない。
少女は、トートバッグを指差した。
「まさか、お前は、その怪異を手懐けた祓い屋か?」
すっかり少女を忘れている怪異は、言葉まで素に戻っている。
「違うわ。怪異とか幽霊とかが見える体質なだけ。たまたま、この二人に会って意気投合しただけよ」
「ふーん。俺を手懐けようとしても、無駄だぞ。諦めな」
「手懐けません。じゃあ、用があるので――」
「ないだろう?」
「あります」
「嘘だ」
すると、長子が長い息を吐いて、首を伸ばした。
「お主。初対面の相手に突っかかるほど、立腹しているようじゃが、突っかかって何がしたいのじゃ? 単なる、腹いせの八つ当たりかの?」
「手懐けられた怪異が、何をぬかす?」
「手懐けられてはおらぬ。わらわは、こやつに付いていきたいだけじゃ」
「それを手懐けられたと言うのだ。分からんか?」
「話にならぬ」
「それは同じだ」
「なら、話は終わりじゃ。よいな?」
「よくない」
今度はニャン七郎が溜め息を吐いた。
「はあ……。何だそりゃ?」
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