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帰りのバスの時間が近づいてきたので、ミコトは二匹の猫をトートバックに入れて――と言うより、勝手に二匹が競って入っていくというのが正しいが――少女を呼びに行く。
ミコトに「ねえ」と声をかけられた少女は、不意に呼ばれたことに驚いて顔を上げた。
「名前を聞いていなかったけど?」
「俺か? 名前などない。それより、俺はどうすればいい?」
「ここで、タケコさんと夕方になるまで待っていて」
トートバッグからヒョイと飛び降りた長子が、少女へ近づいた。
「わらわは、ここに残り、夕闇に紛れて水に飛び込む算段じゃ」
「勾玉をちゃんと探してくれるのか?」
「案ずるな。この目は、暗くても見えるからの。それはよいが……」
少女からミコトへ視線を移した長子が問いかける。
「こやつに勾玉を渡したら、わらわはどうするのじゃ?」
「喫茶店の三軒右隣にユースホステルがあったでしょう? 私、あそこに泊まるから――」
「何? 駅まで歩いて戻れと?」
「違うぜ」
トートバッグから顔を出すニャン七郎がニヤッと笑う。
「白水蛇は、そいつとここで仲良く一泊だ」
「なんじゃと!?」
長子は、大声を上げて目を剥いた。
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