2.湖底に沈んだ記憶

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 帰りのバスの時間が近づいてきたので、ミコトは二匹の猫をトートバックに入れて――と言うより、勝手に二匹が競って入っていくというのが正しいが――少女を呼びに行く。  ミコトに「ねえ」と声をかけられた少女は、不意に呼ばれたことに驚いて顔を上げた。 「名前を聞いていなかったけど?」 「俺か? 名前などない。それより、俺はどうすればいい?」 「ここで、タケコさんと夕方になるまで待っていて」  トートバッグからヒョイと飛び降りた(たけ)()が、少女へ近づいた。 「わらわは、ここに残り、夕闇に紛れて水に飛び込む算段じゃ」 「勾玉をちゃんと探してくれるのか?」 「案ずるな。この目は、暗くても見えるからの。それはよいが……」  少女からミコトへ視線を移した(たけ)()が問いかける。 「こやつに勾玉を渡したら、わらわはどうするのじゃ?」 「喫茶店の三軒右隣にユースホステルがあったでしょう? 私、あそこに泊まるから――」 「何? 駅まで歩いて戻れと?」 「違うぜ」  トートバッグから顔を出すニャン七郎がニヤッと笑う。 「白水蛇は、そいつとここで仲良く一泊だ」 「なんじゃと!?」  (たけ)()は、大声を上げて目を剥いた。
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