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7年後。オウガボウル連載800回突破。
「毎度どうも先生。原稿ちょうだいにあがりましたぁ」
垂れ目が特徴的な九代目担当猿渡は、ヘラヘラと笑い原稿が入った封筒を手にした。
「聞きました? 実写化の話。なんでもハリウッドが手掛けるとか。もう自分今から期待で胸がウッキウキですよぉ」
「それはそうと猿渡君」
プロの漫画家としてすっかり貫禄がついたマンガ家は、パイプを吹かしたっぷり間を取ったあと言った。
「今のサイボーグン編が終わったら完結させるからよろしく」
猿渡は首を傾げた。
「でもでも色々と回収されてない伏線が残されてますよぉ? このまま終わってもファンは納得しないんじゃないですかぁ?」
「それはあえて謎として残して読者が勝手に考察してくれればいい。僕はもう疲れた。完全燃焼したんだ」
それでも猿渡は一歩も引かなかった。
「先生。去年海外で大きな地震がありましたよね」
「もちろん。数万人の被災者が出た過去30年間で一番大きな地震だったな」
「その被災者達の心を支えているのは他でもない、オウガボウルなんですよ」
マンガ家はパイプをくわえたまま固まった。
「多くの被災者がオウガボウルの主人公のように、どんな困難や辛い目に遭っても決してくじけないと必死に立ち直ろうとしているんです。震災だけではなく、イジメや難病にも立ち向かえる勇気をもらったと全国の子どもたちから手紙が届いてます。先生の作品が世界中の人間に活力を与えてるのです。今やめられたらその子たちを見捨てることになりますよぉ」
「し、しかしだな、作品はいつかは終わるものであってな、僕も一人の人間だし」
「先生こそ人類の救世主。神です。神様ならもう少しだけ続けてもバチは当りませんて」
マンガ家はもはやぐうの音も出なかった。
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