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8年後。オウガボウル連載1250回突破。
「お疲れ様です。先生」
仕事机に向かうマンガ家の背後に眼鏡をかけたいかにもインテリな十一代目担当、乾が立つ。
「執筆中申し訳ありませんが新シリーズの打ち合わせの日程を確認したいのですが」
「新シリーズはもう無い。ヒマジンブスを倒したら完結させるよ。いいね」
「アンケートが低迷しているのであれば致し方ありませんが、オウガボウルは長期連載に関わらず人気はまだまだ衰えておりません。オウガボウルの後釜となりうる作品が無い以上、もう少しだけ続けていただくのが我々の希望で」
瞬間、バンと机に両手をつきマンガ家は勢いよく立ち上がった。
「もう少しもう少しで25年だよ25年! 四半世紀も描いてるんだよ! さすがにこれ以上の人生をオウガボウルに捧げる気はないよ!」
「そうおっしゃられましても、オウガボウルは今や世界中の人間に愛されている作品。その経済効果はウン兆円とも言われています。もはやオウガボウルは先生だけの作品ではないのですよ」
「そう! オウガボウルはもう僕の手を離れひとりでに歩いている! もう僕の力は必要ないんだ! 絵ならそっくりに描ける人がいくらでもいるだろう! 続編でも外伝でもスピンオフでも好きなように描かせて続けりゃいい! 僕はもう金輪際オウガボウルには関わらないからね!」
とうとう我慢の限界に達したマンガ家。ついにこの日が来たかと編集者達は緊急の会議を開いた。協議に協議を重ねた結果、オウガボウルは第一部終了とし最終回を迎えた。
ようやく週刊連載から解放されたマンガ家の心は晴れ晴れとしていた。もう働かなくても勝手に金が入ってくる。それも使いきれないほどの大金が。マンガ家は稼業を引退し、悠々自適な生活を送った。
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