打ち切りまでの経緯

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 連載終了から10年後。いつものように高級車でお気に入りの飲み屋に向かうマンガ家。  早く着いたので開店するまでの間暇つぶしをしようと近くのコンビニに入ると、雑誌コーナーで少年同士の会話を耳にした。 「今週も“オウガボウルハイパー”、すごいな」 「おう。まさかの展開だったな。作画も神がかってたし」  マンガ家の足が自然と止まる。 「昔の無印も面白いけど、ハイパーはそれを余裕で越えてるよな」 「これって原作者一切関わってないんだろ? それなのに印税がっぽがっぽで羨ましいよな」 「もう一生描かなくてもいいんだもんな。いいご身分だよなー」  少年たちが立ち去った後、マンガ家は無意識的にかつて連載していた雑誌を手に取った。  パラパラとページをめくり、別の者により描かれた続編漫画のページを開いた瞬間、マンガ家の目から衝撃が入り込み、脳を揺さぶった。 「こ、これが、今のオウガボウル、だと……?」  荒々しくスピード感溢れるタッチ。ド迫力の構図。表情豊かなキャラクター。衝撃的なシーン。それらがこれでもかと詰め込まれた19ページに、マンガ家はすっかり魅入られていた。  やがてマンガ家の中である感情が沸き起こり、すぐに出版社に電話をかけた。 『お電話ありがとうございます。週刊少年ジャンパ編集部です。あ! これはこれは! え? 読み切りを描かせてほしい?』 「ああ。久々に創作意欲が湧いてね」  オウガボウル原作者の読み切りなら話題になると、編集長はすぐに承諾。こうしてマンガ家は十数年ぶりにペンを取った。
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