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「もう少し、優しくしてほしかった」
それが、3年付き合い、結婚も考えていた彼女の捨て台詞だった。もう少し優しい人間だったら、僕はフラれなかったらしい。
倒れ込むように腰掛けたベンチでぐたりと項垂れ、ひとり取り残された公園。夕暮れに馴染んでいく砂場を眺めながら、ぼんやり考える。
僕の人生、こんなことばかりだ。
もう少し優しければ。
もう少し頭が良ければ。
もう少し社交性があれば。
いつも〈もう少し〉のところで上手くいかない。
これからの人生も、きっと、そんなことの繰り返しだ。
「あー……」
溜息混じりに声を吐き出して、背凭れに身を預けたまま空を仰ぐ。
「もう少し……もう少しだけ……」
譫言のように呟きながら、情けない自分から目を逸らすように、そっと瞼を下ろした。
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