もう少し保険

『当社の保険で積み立てていただくのは〈金銭〉ではなく〈努力〉でございまして』

「努力？」

『はい。お客様がされた〈努力〉を積み立て、必要な際に必要な部分に〈成果〉としてご利用いただける、という仕組みになってございます』

　自分のした〈努力〉が欲しい〈成果〉に変えられる。ゲームの中で増やしたＭＰを攻撃や回復など好きな魔法に使えたり、貯めたコインと薬草や武器を交換出来る、みたいなことだろうか。
　理解しようと頭を働かせていたら、

『左様でございます』

　と正解の判定が出た。口に出さなくても伝わるというのも、良いんだか悪いんだか。

「要は、動体視力は〈努力〉して鍛えれば良くなるけど、視力は〈努力〉しても易々と回復するものじゃないからダメってことですか」

『その通りでございます』

　全肯定されると、頭の良い人間になったようで、ちょっと嬉しい。
　けれども、まぁ、学生時代なら足が速くなりたいだの部活でレギュラーをだのの目的もあったが、生憎、営業部の仕事にはそれほど運動能力が必要とは言えないし、地理には強く、本を読むのも早い方なので、このプランにも縁は無さそうだ。