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「そうかな。今も企業によっては、学歴は判断のための重要なファクターになり得る。実際にその仕事に向いているかどうかなんて、やってみないと分からない。だからまずは、分かりやすい学歴を基準にするというのは、まあ、ありがちだ」 「アンタのとこも?」 「そうだね。書類だけならまずは学歴を見るだろう。そこがどんな学校で、何を得意としているのか。でも……最終的には面接だよね。今の君のような態度なら、まず取らない」  学生証を返しながら言われて、イオが顔を顰めた。 「それ絶対、私怨が入ってるだろ」  緩く首を振った春海が、ゆったりと脚を組みながら答える。 「言葉遣いとマナー」  鼻白んだように目を逸らしたイオは、少しだけ姿勢を正した。  それが面白かったのか、春海が小さく笑う。 「ま、今は面接じゃないから、別に楽にしてもらっていいけど」 「俺の素性は明かした。これで対等だろ」 「対等、ねえ。何をもって対等と言うのか分からないけど。俺と彼女は、納得して契約を結んでる。そのうえで、お互いを尊重しているつもりだよ」  じっとその横顔を見ていたら、不意に春海が顔を向けて目が合う。 「毎日それなりに楽しく過ごしてる」  ね、と同意を求めるその目が悪戯な光を宿していて、芽衣は思わず頬を緩めた。 「はい」  目を合わせて微笑む様子を、イオは目を丸くして見つめる。 「――――― ねえ、本当に恋愛的な好きはないの」  怪訝そうに眉を寄せるイオを同時に見やった二人は、お互いに目を戻した。 「うーん」  同時に唸り、やはり同時にイオに目を向けた。 「さっきも言ったけど」  芽衣の前置きを待っていたかのように春海が続く。 「人としては好きだよ」  不可解なものを見るような目で春海と芽衣を見比べたイオは、バカバカしい、とでも言いたげに大きく息を吐いた。
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