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「もうなんか訳わかんねえ。傍から見たら、普通に恋人同士じゃん」
半ば投げやりに言って、残った抹茶ラテを飲み干す。
「サツキとアンタが上手く行ってるってのは、まあ分かった。このまま話しても俺には理解できそうにないから、今日は一旦引くけど……サツキ」
つい、と目を向けられ、芽衣は思わず背筋を伸ばして「ハイ」といい返事をする。
「なんか困ったことがあったら言えよ」
「え、ああ、うん……」
「……今、大学生に相談しても、とか思っただろ」
「え!や、いやいや、そんなことは」
えへへ、と取り繕うように笑うが、イオは胡乱げな目を向けた。
ち、と一つ舌打ちを漏らすと、音を立てて席を立つ。
「じゃあ、またフィールドでな、サツキ」
「うん」
バッグを肩に引っ掛けながら踵を返すイオを見送って、どちらからともなく深い溜息を漏らす。
「――――― 結局、何だったんだ、彼は」
「さあ……」
芽衣にも良くわからず首を傾げると、肘をついてそこに頬を乗せ、片眉を上げて見てくる。
「……なんですか」
「彼、やっぱり君のことが好きなんだと思うよ」
したり顔で言われて、思わず、はっ、と小馬鹿にした息を吐いた。
「まさか」
「そうでなければ、あんなに食い下がる理由が思いつかない」
「意外としつこかったですね」
「うん。大切な友達、とは言ってたけど、たかだかネット上の知り合いに、あそこまでムキになるものかな。リアルの友達に対しても、ああいう熱いタイプだと思う?」
「それは何とも言えませんけど、ゲームの中では、パーティを組んだ仲間にそこまで干渉するタイプではないですね」
肘をついたままの姿勢でじっと見つめられ、芽衣はいたたまれなくなって「すみません」と謝ってしまう。
すると、春海は吹き出すように笑った。
「まあ、君も想定外だったみたいだから、もういいよ。これから、俺たちが険悪になったりしなければ、彼も首を突っ込んでくることはないだろう」
ついさっきまでのイオとのやり取りを反芻して、「そうですね」と頷いた。
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