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 炭酸水の買い置きがなくなりそうだから、と帰りに業務スーパーに寄り、ビールやつまみ類も買い込んで帰宅した。 「あ、そうだ。母が再来週の水曜にこっちに来るそうです」  買い込んできたものをストッカーに仕舞いながら、思い出して春海を振り返る。  箱から出した炭酸水とビールを冷蔵庫に入れていた春海が、手を止めて目を向けた。 「そうか。ホテルの手配しておかないとな。飛行機?新幹線?」 「父が飛行機が苦手で……。博多から新幹線で来ると思います」 「じゃあ、東京駅に近いところがいいか。そうなるとやっぱりステーションホテルがいいかな。東京駅直結だし」  芽衣はあまり都内のホテルを利用したことがないので、曖昧に頷く。  てきぱきと飲料を冷蔵庫に納めた春海は、畳んだダンボール箱を片づけて、リビングでノートパソコンを広げた。  ストッカーの片づけを終えた芽衣は、お茶を淹れようとお湯を沸かし始める。それから、さっき冷蔵庫に入れたばかりの牛乳パックを取り出した。  牛乳パックだが、中身は水ようかん。 「業務スーパーの水ようかん、一度食べてみたかったんだよね」  一人では持て余す量なので、手が出なかったのだが、二人なら何とかなるだろう。  うん、と頷いて、早速封を切る。  大きめのタッパーを用意して、そこにパックを傾けると、ずるん、と中身が出てきた。 「……さすがの量……」  早まったかな、と思ったものの、景気よく切り分けて皿に盛る。  四角い皿に鎮座する真四角の物体。 「白玉とか栗の甘露煮とかあったら、見た目がもうちょっと違ったかも……」  仕方がない。  これはこれで。  まあいいか。  たっぷり食べよう。一緒に。  トレイに二つの皿を乗せ、デザート用スプーンを添える。 「今日は白折にしよ」  実家から送られてきた茶葉の中から、茎と芽が中心の「白折」を選んだ。  お茶の旨味が詰まった茎には、玉露とは違った美味しさがある。  トレイを手にリビングに行き、ローテーブルに置いてから春海の隣に腰を下ろし、パソコンのディスプレイを覗いた。 「……あの、一体どんな部屋を予約するつもりですか……?」  そこに表示されている金額を目にして、押し出した声が震える。 「四泊五日なら、くつろげる方がいいだろうし、スイートに……」 「いやいやいや、普通のツインでいいですから!もっとありますよね、安いお部屋!」  だって九十万超って! 「二泊くらいならいいかもしれないけど、四泊するならこっちの方がいいって。せっかく来てもらうんだから、朝食つきでスイートだろ」 「春海さん。うちは完全なる庶民なんです」  真顔で言うも、春海は「それが?」と取り合う気もなく、さくさくと予約を済ませようとしている。 「そんないいお部屋、逆に落ち着きません」  しばし考えていた春海は、芽衣に顔を向けた。 「芽衣さん。俺は久世グループのトップ企業を任されてる」 「はい。もちろん存じ上げてます」 「KUZEマテリアルの社長が、妻となる人の両親を安い部屋に泊まらせた、なんて、うちの古株の幹部が知ったらどう思うかな」  淡々と告げられて、芽衣は思わず押し黙る。
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