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翌日は余裕をもってスケジュールを組んでいたので、しっかり定時に上がる。
「社長。準備できました」
隣の社長室のドアをノックをしてから顔を覗かせると、デスクで書類のファイルを広げていた春海が顔を上げた。
「じゃあ、行こうか。一旦帰って着替える?」
春海はファイルをデスクの隅に積んで席を立ち、デスクの引き出しから車のキーを取り出しながら訊ねる。
自分の恰好を見下ろした芽衣は肩を竦めて頷いた。
「そうですね。さすがに仕事用のパンツスーツでは楽しめません」
その言葉に、ふ、と春海が微笑む。
「そうだね。せっかくのご両親との食事だ。楽しまないと」
連れ立って部屋を出ながら訊ねた。
「お店は東京駅の近くですか」
「近くというか……駅中だよ」
「駅中?」
「そう。なかなか侮れないよ。今夜は気軽に楽しめる店をと思って……あ、ご両親はビールとか……」
「大好きです。私も」
ちゃっかり自分も乗っかると、春海が悪戯っぽく笑う。
「それは良かった。クラフトビールを扱う店で、飲み比べができるよ」
「本当ですか!楽しみ」
上機嫌の芽衣を見る春海の目も楽しげだった。
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