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だがその時、俺の迷いを裂くように、正面の下り坂から明かりがこちらへと迫ってくるのが見えた。
何の事はない対向車の明かり。深夜帯に、こんな山道を登って来る事以外は不自然ではない。
けれど、それを見た咄嗟に、彼女は頭を伏せ出した。
「村の者かも……!?」
そして、それは真横を通り過ぎていく。普通のおっさんが運転するただの軽自動車だった。
しかし、彼女は怯えた様子で「やっぱり……!」と言い放ってきた。
そして、彼女は続けざまに声を荒げてもくる。
「見られたかもしれません! お願いです!! 早く、出して下さい!!」
その勢いに押され、俺は思わず走り出す。
そして、バックミラー越しに後方の様子を窺った。
すると、後ろから明かりが猛スピードで近づいて来る。
先程まで、後ろから車が近づいてくる気配などなかった。
だとすると、さっきすれ違った車以外ありえない。
俺はその事に恐怖を覚えると共に、アクセルを思いっきり吹かした。道は狭く急な下り坂。それにも関わらず、車は猛スピードで下っていく。
だがそれでも、後ろの車は離される事なく後ろの方を付いて来ていた。
そこで、俺は取り乱した様に問いかける。
「なんなんだ!? 本当に君を狙って追っかけてきてるのか!?」
「間違いありません! 巻き込んだ事は謝ります。けど、今は何とか振り切って下さい!!」
彼女は必死に訴えかけてくる。
俺はそれに狼狽えつつも
「わ、わかったよ」と答えるしかなかった。
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