彼女を攫った日の出来事

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 その時、車は再び3車線分もある広い場所へと出る。ただ、その先はUの字となった急カーブ。そこで俺は、当然の様に減速し曲がろうとした。  ところが、後ろの車は減速することなく、猛スピードでカーブへと突っ込んでくるではないか。  後続車のヘッドライトはすぐさま真後ろへと張り付いた。  そして次の瞬間、あろう事か俺の車を軽く小突いてきたのだ。 「こいつッ!!!?」  大した衝撃ではない。しかし、カーブに差し掛かっていた車は体勢を崩し、スピンし始める。 「クッ……!!」   すぐさま車は制御不能となった。視界は360度目まぐるしく移り変わる。目の前の下り坂から、山肌、ぶつけてきた車。そして、ガードレールとその先の谷底。 ――俺達はこのまま、ガードレールを突き破り、谷底へと落っこちていく!!    そんな事が脳裏を過り、俺は目を閉じて必死に祈り続ける事しかできなかった。 ――何とか留まってくれ!! と。  その時間はとても長く、時が止まっているとさえ思った。
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