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今日は朝から雲一つない快晴だ。
昨日、朝の気象情報を見ながら「ホワイトクリスマスの方がロマンチックなのに」なんて聖花はテレビに向かって文句を言っていたが、散歩するには晴れの方がいい。
おととしみたいに雪が積もって、凍り付いた歩道で茉奈ちゃんがまた足を滑らせでもしたら大変だ。
あのときは親切な通行人が手を貸して起こしてくれたけれど、と思い出した俺は、頭の片隅に何か引っかかった気がした。まあ、気のせいだろう。
茉奈ちゃんはポロポロと涙を零し続けているから、今朝は散歩に行かないのかもしれない。
「もちろん今日が交際一周年記念日だってことは憶えてたよ。だから、特別なサプライズをしたくて聖花さんに手伝ってもらったんだ。その交換条件として『誰かいい人紹介して』って言われたから先輩を紹介しただけで。浮気なんかしてないし、茉奈と別れる気なんか毛頭ないよ」
「ほら、もう座って。あとは俺が洗うから」と言って純也は茉奈ちゃんの涙を親指で拭うと、彼女を椅子に座らせた。
茉奈ちゃんがやっと俺の顔を見て、「小太郎……」と震える唇で呟いた。
悔しいけれど、茉奈ちゃんが愛しているのは純也であって俺じゃない。
だけど、少しでも茉奈ちゃんの心に寄り添いたくて、俺は味方だぞと頷いてみせた。
男女の仲は難しい。下手に俺が口を挟むと余計に拗れてしまいそうだ。
「特別なサプライズって何? 聖花に何を手伝ってもらったの?」
茉奈ちゃんがダイニングをグルッと見回し、クリスマスツリーのあるリビングに目を向けた。
相変わらずぶら下げられたオーナメントは偏っているし、電飾も綿の雪もバランスが悪い。
クリスマスイブだという特別感はツリーで演出できているが、それだけだ。
ハッとして冷蔵庫を見た茉奈ちゃんが「もしかしてケーキを買ってきたとか?」と尋ねたが、「それは今夜取りに行くよ。一緒に予約に行っただろ?」と返されてしまった。
毎年茉奈ちゃんはお気に入りのケーキ屋にクリスマスケーキを予約している。純也のサプライズはケーキじゃないらしい。
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