358人が本棚に入れています
本棚に追加
「私こそ、純也のこと信じられなくてごめんなさい。出会った瞬間から純也は私のことだけを見て私のことだけを考えて一途に愛してくれてたのに、たった一度の不審な行動だけで疑っちゃった」
肩を落とした茉奈ちゃんは反省しきりの様子だが、俺に言わせれば純也の一途さはストーカーじみているし、夕べのアレは疑われても仕方のない行動だったと思う。
やっぱり茉奈ちゃんは優しくてお人好しだ。
「じゃあ、許してくれる?」
「私を喜ばせようとして、いろいろ準備してくれたんでしょ? だったら許すけど、もうこんなことするのはやめてね。たとえ私のためだとしても、純也が香水の匂いが移るぐらい他の女の子と一緒にいたら嫌だから」
口を尖らせて焼きもちを焼く茉奈ちゃんは本当に可愛くて、純也じゃなくても思わずギュッと抱きしめてキスしたことだろう。
「もう絶対にしないよ。そもそも聖花さんの香水の匂いがきつすぎるんだ」
「だよね」
2人は顔を見合わせてフフフと笑っているが、あの匂いには俺も閉口している。いわゆる香害って奴だな。
「2年前に出会ったときから、茉奈のことが好きで好きでおかしくなりそうだったんだ。茉奈に近づきたくて住所を調べて、シェアハウスに入居して。まるでストーカーみたいなことをしてしまった自分に驚いてたのに、茉奈は喜んでくれたよね? 『私もあのとき助けてくれたあなたのことがずっと気になってたんだ』って。すごく嬉しかった。運命の出会いだったんじゃないかって」
「うん、私もあれは運命だったと思う。でも、私はずっと忘れられないでいただけだったのに、純也は行動を起こしてくれたでしょ? そのおかげで今私たちは一緒にいられる。ありがとう」
ああ、また始まった。こいつらときたら、俺がいることも忘れて2人の世界にどっぷりと浸かってやがる。
クリスマスは愛と許しの季節だ。
俺も愛し合う2人を寛容な気持ちで見守っていたが、だんだん深くなっていくキスを見て、わざとらしくクシュンとくしゃみをしてみせた。
茉奈ちゃんはハッとしたように純也に密着させていた身体を離すと、「それでサプライズの指輪はいつくれるの?」と尋ねたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!