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純也は大きく息を吸い込むと、テーブルの上に置かれた茉奈ちゃんの手に自分の左手を重ねた。
「今夜渡すつもりだったけど……俺がどうしてそんなにサプライズにこだわったのか茉奈は不思議に思うよね? それはこれだから」
そう言って純也が右手で差し出したのは、大きめのダイヤモンドが輝く指輪だった。
「え⁉ これって?」
「茉奈、これから先も一生涯君だけを愛し続けると誓うから、どうか俺と結婚してください!」
なんだよ、そういうことかよ。
もう茉奈ちゃんは嬉し涙を浮かべながら、何度も頷いている。
それでも純也ははっきりとした答えを聞くまでは安心できないみたいで、「茉奈、返事は?」と促した。
「はい……よろしくお願いします」
涙声で答えた茉奈ちゃんが純也に頭を下げると、純也も感極まったように彼女を抱きしめた。
やっぱりこの2人の喧嘩は犬も食わなかったな。俺は大きなため息をついた。
そのとき、奥の部屋からもう一人の住人である高志が出てきた。
「朝からうるせえな。イチャイチャするならラブホにいけよ」
ブツブツ文句を言いながらウォーターサーバーに向かっていた高志が、茉奈ちゃんたちの背後で足を止めた。
「え? 何、それ? もしかしてエンゲージリングって奴?」
「うん、今プロポーズした」
嬉しそうに報告した純也の横で、茉奈ちゃんも照れ笑いを浮かべながら頷いた。
「すげえ! おめでとう! 今夜はお祝いに酒盛りだな!」
興奮する高志に、純也と茉奈ちゃんが「ありがとう」と微笑んだ。
これにて一件落着か。
茉奈ちゃんが結婚だなんて寂しい気もするが、彼女が幸せならそれでいい。
ちょっと涙が滲んだのは、窓から差し込む朝日がやけに眩しいせいだ。
茉奈ちゃんが立ち上がって、大きく伸びをした。
「じゃあ、一緒に小太郎の散歩に行こうか? いろいろこれからのこと話し合いたいし。ね、小太郎。今日は純也も一緒でいいでしょ?」
俺はしっぽを振って返事した。
「ワン(まあ、いいけどな)!」
END
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