クリスマスイブイブの不審

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 今日、12月23日のことをクリスマスの前日の前日ということで、クリスマスイブイブなんて呼ぶのは日本だけらしい。  それでも今朝、リビングで茉奈(まな)ちゃんが聖花(せいか)と「今日はイブイブだね!」なんて楽しそうに話しているのを聞けば、俺だって少しだけ浮かれた気分になった。  このシェアハウス【フルハウス】の住人は4人で、聖花はちょっと無神経なところがあるから俺は好きじゃないが、茉奈ちゃんの親友だから我慢してやっている。  街中が緑と赤のクリスマスカラーに彩られる季節。  【フルハウス】のリビングにもひと月前からツリーが置かれ、様々なオーナメントや色とりどりの電飾が住人たちの手によって飾り立てられている。  と言っても皆で一斉に飾ったわけではなく、住人それぞれが自分の都合のいいときにやったので、オーナメントは玄関側に集中しているし雪を模した綿や電飾は枝に無理やり引っ掛けた感じだ。  そのいい加減で無秩序な様子は、今のこのシェアハウスの在り方をよく表していた。  一応入居前に同意したはずの4つのルール(①共有スペースを独占しない②個室にいる人には話しかけない③他の住人の私生活を詮索しない④友達や家族を勝手に入れない)は、次第になし崩しになっている。  それは茉奈ちゃんが住人の1人である純也(じゅんや)と付き合い始めたせいなのか、ルールが破られてきたから2人の仲が深まったのかはわからないが……。  以前よりみんながリビングで話す機会が増え、それに従って人間関係も複雑になってきているように感じる。  夜になって床から寒さが這い上がってきた頃、純也の部屋から彼と茉奈ちゃんが出てきた。  仕事が土日休みの2人は、土曜日の今日は部屋でまったり過ごしていたようだ。  リビングでうとうとしていた俺はハッと顔を上げて、玄関を出ていく純也の背中を無言で見送った。  こんな夜中にどこに行くんだろう?  そう思って壁の掛け時計を見上げたら、まだ8時だった。  駅前のジュエリーショップで働く聖花がそろそろ帰る時間だが、クリスマスは書き入れ時だからまだ帰れないのかもしれない。
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