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駅裏に
猫が1匹住んでいた
駅裏から
いつも通る人と空を見上げていた
明るい空のときは
皆急いで走ったり
時計を見ながらきょろきょろしたりしていた
暗い空のときは
今起きたばかりのような人や顔を赤らめた人が多かった
小さな猫は
人に踏まれないよう気をつけながら
いつも人と空を見上げていた
人はいいな
空に近くていいな
あそこまで行けば
空はもっと綺麗に見えるかな
もっと高いところまで行けば
空はもっと青く見えるかな
ある日
いつものように空を見ていると
空から美しい声が聞こえた
「あなたは今より空に近いところに行きたいの?」
小さな猫はうなずいた
すると
小さな猫に羽が生え
耳はなくなり
小さな猫は
小さな鳥になった
駅裏の小さな猫は
駅裏の小さな鳥になった
小さな鳥は喜んで
人より高い場所を飛び
人の上を飛び回った
皆
見上げてごらんよ
空と僕はここだよ
皆
気付いてよ
空と僕はここだよ
しかし
人は見上げない
誰も見上げない
小さな鳥が小さな猫だったとき
人を見上げていたからこそ
その先の空を見ることができた
小さな鳥が
いくら人の上を飛び回っても
せわしなく働く人々は誰一人として
空を見上げなかった
小さな鳥に気付かなかった
そして
いつしか駅裏の鳥も
空を見上げることを忘れた
人を見下ろす鳥に
空はもう見えない
空は
今日もこんなにも青いのに
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