親愛なる友へ

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 手紙は久しぶりだから、まずは近況報告をしようと思う。  私は親友と離れたあと、新たな友を得ることもなく、一緒にいた友と喧嘩をしながら組織に入って年上に怯えながら比較的平和に過ごしていた。充実していたとも言う。  その日々を思い出すのはもう無理だが、時々親友を思い出しては組織の生活に励んでいたことは覚えている。  その励みが水の泡になってしまったちょっとした事件があった。ほんの些細な出来事だ。  組織の生活に慣れた頃、私は大丈夫だと思って小さな罪を犯した。その小さな罪を年上の、しかもおしゃべりで怖いのに見られてしまった。私が気づいたときにはその年上がそれより怖い年上に報告したところだった。幸い、私だとは言っていなかったが、それでも、私の心を折るには十分だった。  それから私は組織に向かうことを拒み、何かと理由をつけて休んでいた。今と昔の私を知っている親友はそれを聞いて不審に思うだろう。 『それぐらいならば私の心は折れないのではないか』と。  十分なんだ。私の本性は、人の視線や隠された心情に怯え、怖がっていることだ。たったそれだけのことで、私の心はいともたやすく折れる。  そこからか?  覚えてはいないが、できる限りの感情は消そうと考えた。  小さな覚悟を小さく積み重ねて作り上げた壁を、私は未だに壊せないでいる。  それから、私は不登校をはじめ、成績も下がり、今の組織に行けたのが奇跡だと思っている。  なぜ今の組織に行けたのか。  自問自答を繰り返し、答えを見いだせないまま今の組織に向かうことを考えたとき、親友から連絡があった。  人づてで聞いた話だったが、親友が今の組織に向かうというものだった。親友に会うことで自分は変われるかもしれないという淡い期待を込めて、今の組織に一直線にレールを敷いた。  そこからはがむしゃらに走り続けた――  すべては親友に会うために
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