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それを聞いて私はなんて言葉を返せばわからなかった。雅也も別に返してほしいと思っていなかったのかそのまま言葉を紡ぎだす。聞いてほしかっただけかもしれない。弟というどうしても自分の味方になってくれる人じゃなくて、赤の他人に自分を贔屓する理由がない人間に忖度なしで聞いてほしかったのかもしれない。それでも全部は話さないけれど。
「そもそも普通の社会人として生きていない時点でゼロ以下だからさ。まずゼロに戻ることからなんだよ」
そう言って一息吐き出す。そのため息がすごく深い。
「頑張ろうと思ったのに今日もダメだったし」
「それなんだけどさ、何で私は大丈夫なの?」
ずっと思っていたことだ。だって私との会話だけ見ればそんな仕事ができなくなってしまうくらいの女性恐怖症の人にも思えないんだよね。今だって逃げずに目の前にいるし。
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