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「お待たせいたしました。本日のランチのオムライスセットでございます」
母さんが何か言おうとしたタイミングで顔なじみとなった私より少し年下に見える男性の店員さんが注文の品を持ってきた。
「出来立てですので、温かいうちにお召し上がりくださいね」
にっこりと母さんに向かって言う。その完璧な笑顔に母さんは私に言おうとした口を一旦閉じる。そして小さく息を吐き出した。
「…話はあとにしていただきましょうか。あんたもその資料片づけなさい」
「…分かってるわよ」
鞄に資料を片づけてから、「いただきます」と手を合わせていただく。店員さんが言った通り出来立てで、二人して夢中になって食べる。美味しいものを食べるとき、余計なおしゃべりをせず食べるところは母さんの遺伝だと思う。ランチセットについている熱々の野菜スープを火傷しないようにちびちび飲んでいると先ほどの男性店員さんと目が合う。視線だけで「毎回のやりとりごくろうさまです」と言うのが伝わってきたので私は小さく頭を下げた。とてもじゃないけど目なんて合わせれない。
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