そしてハッピーエンド

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……神山透との、何気ない会話を思い出す。 そう言われてみれば何かの拍子に、そんな感じの神山透の将来の話を聞いたような気もしなくもない。 まさかあれは、私との未来の話だったとは。 神山透が語る将来設計はかなり具体的で、ずっと先のことまで見据えている。 そんな話を聞いてしまうと急に何だか照れくさくなって、「そ、そうなんですか?まさかそこまで思って頂けてるとは知らなくて……。」 と、私は思わず顔を赤らめてしまうのだった。 ーーー 幸せな気持ちになる一方で、給湯室で飲みに誘われたあの日から今日までのことを振り返ってみると、やはり要所要所で紺野洋子の存在が大きな意味をなしていたことに気がつく私である。 散々な目にはあったけれど、紺野洋子にはある意味では感謝しなければいけないのかもしれない。 思わずそんなことを呟くと、神山透はものすごく嫌そうな顔をして「なんでですか?」と言うものだから、慌てて「神山さんにとっては思い出したくない出来事なのに、そんな事を言って申しわけない」と取り急ぎ謝ってみる。 けれど、紺野洋子があの日、神山透を泥酔させてホテルにつれこまなければ。あの時彼女が給湯室で下世話な噂話をしていなければ。 「たられば」の話にはなってしまうが、彼女がああいった行動を起こさなければ、私と神山透がこんな関係になることも、恐らくなかったはずなのである。
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