ルームナンバー315

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「どの部屋にしましょうか?」 薄暗い室内の中、煌々と光る四角のパネル群を見つめる男女2人組。……私達のことである。 ここはいわゆる、ご休憩がメインに設定されているホテルのロビー。あの居酒屋から更に駅を離れた場所は実はホテル街だったのだ。 あれから「それでは善は急げですよね」などと言われて、イケメンに半ば引きずられるように店を出た私達は、ホテル街へと足を向けたのだった。 繋がれた手は、相変わらず逃げられないようにする為か、指と指を絡ませた恋人つなぎである。 傍からみれば、イチャイチャしたがるお盛んなカップルだが、その実はなんでも追求したがる研究マニアとそれに付き合わされる会社の同僚という色気の欠片もない組み合わせ。 「ホテル街が近くのお店を選ぶなんて、さすが先生。うまい選択でしたね」なんてこちらを見て意味深にニッコリ笑う神山透。 違う!断じてこんな展開は予想だにしていなかったよ!下心ありきで店を選んだように思われるのは甚だ心外である。 思い切り恨みがましい目を向けると、イケメンはフフッと笑って「冗談ですって」と楽しそうに言うのだった。
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