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ルームナンバー315
「えーと、神山さんは何飲みます?」
ここは会社の最寄り駅の改札口とは反対側の、いわゆるチェーン展開している大衆居酒屋。
実は意外と刺身とか焼き物が美味しいんだよね〜。
シチュエーションはともかく、久しぶりの飲みの席。
美味しいもの食べたいな!
2つあるメニューの片方を元気よく相手に手渡すも、相変わらず首をうなだれているハイスペック男子・神山。
……こりゃだめだ。
相手に返事がないので、「じゃ、とりあえず生ビール頼みますね」と話しかけ、店員に適当な食べ物と共に注文を行った。
思い返せば1時間前、顔色の悪い神山透から突然飲みに誘われて了承したのは、私もなんだかあの給湯室の会話を聞いて、思い出さなくていいことを思い出して、モヤモヤした気分だったからに他ならない。
「じゃ、僕もちょっと残務処理あるので、30分後に会社のエントランスで待ち合わせにしましょうか」
そうスマートに言い残すと、イケメンはくるりを背中を向けて、何事もなかったかのように自分のデスクのある部署へと戻っていった。
が、その足取りはいつもより多少ふらついているようにも見えるのだった。哀れなり。
よーし本日の残業は中止!今日はもう、飲む!!
給湯室に入っていく勇気はもうこれっぽっちも残っていない。カップを洗うのは週明けに持ち越しにしようっと。
そう決意した私はその場で飲み残しのコーヒーをグイッとあおると、身支度を整えに自分のデスクへと戻るのだった。
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