ルームナンバー315

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さて、給湯室の前で別れてからそれほど時間は経っていないはずだったのだが、エントランスには既に神山透が立っていた。 相手を待たせないこの気遣い。営業の鏡!! こういうところもスパダリとかハイスペ王子と称させるところなんだろうなーとぼんやり思いながら彼の後について会社を出るも、イケメンはこちらを振り返って、 「誘っておいてなんですが、今日のお店どうしましょう?ちょっと僕、今頭が混乱していてどこが良いのかわからなくて……」 と、いつも社内でみせる自信にみなぎるキラキラとした表情とは程遠い、迷子の子犬ちゃんのような目で、話しかけてくるのであった。 そのギャップたるや! 首を傾げてこちらを申し訳なさそうに見つめてくる様子は、不謹慎だがなんというか、目の保養。 うわー。かーわーいーいー。 実家の飼い犬を連想して、ヨーシヨシヨシと頭を撫でくりたくなる気持ちになるが、いかんいかん!ぐっと堪える私であった。 ああそうか、そうだよねー。 愛しい彼女に会いにきたら、出会い頭にきっついカウンター食らったようなもんだもんね。 わかる、わかるよ!と納得した私は、 「じゃあお店は私が決めていいですか?」と言って、冒頭の大衆居酒屋に足を運ぶのだった。
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