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セレクトショップの店内に並べられたショーケースの影から声がした方向に顔を向けると、あなたがいた。
そして次の瞬間には、もう何もかもが繋がって、何もかもがわかってしまった。
いつも見かけるスーツ姿だったけど、いつもよりしゃきっとしていて。
パパ、と駆け寄ってくる、私の半分も背丈がない女の子に笑顔を振り撒いて。
私の手を握るようにぎゅっと彼女の手を握っていて。
傍にいたきれいな髪のスラッとした背の高い女性と二人で女の子を挟んで歩いて行ってしまった。
なんとなく、予感はあったんだ。
会う日も時間も、いつも決まっていたし。
いつも用意するプレゼントは、受け取ってくれないし。
ふたりで朝を迎えて外に出たとき、なんだかそわそわしていたし。
もっと早く気づくべきだったのかな。
でも、気づいたとして、終わらせることが私にはできたんだろうか。
いいや。
きっと、もう少しだけって言われたら、もう少しだけと思って、いつになっても差し出された手を掴んでいただろう。
手を繋いでいるうちに、もしかしたらあの女の子の母の代わりに私がいる日を夢を見て。
そんな日がくるわけなんてないのに。
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