第3章 ワンコは我慢できない

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 さっきみたいに抱きしめたり、キスをしたりはあったけれど、まだ全てを経験した訳ではない。  全身がドクドクと脈打つのを感じる。  私はどんな顔をしていたらいい? どういう気持ちでいたらいい? 考えたいのに、いっぱいいっぱいで上手く思考が回らない。 「そろそろお風呂入る?」 「おっ、ふろ……さ、先どうぞ」  声がうわずってしまった。柊が入っている間に少しでも落ち着きたい。  そんな緊張が分かったのか、私の頭をポンポンしてから、逃げないでねと言ってお風呂に入っていった。 「やっぱり……」  柊はそういうつもりなんだ。まったく、おちつくどころか、さらにドキドキしてしまうではないか。  しかも、ゆっくり入ってくれればいいのにシャワーで済ませたのか、落ち着く前に出てきてしまった。  とてもラフな服装なのに、濡れた髪がとても色っぽい。カッコ良さが増している気がする。 「速いですね……」 「美桜ちゃんはゆっくりしてきていいよ」  思わず見とれてしまっていた私に向かって、柊ははいっと紙袋を渡してきた。 「お風呂の後、これを着て出てきてね?」  私が袋を開けようとすると、柊が慌てて止めて来る。開けるのは、着る直前にと言われた。 「これって……?」
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