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さっきみたいに抱きしめたり、キスをしたりはあったけれど、まだ全てを経験した訳ではない。
全身がドクドクと脈打つのを感じる。
私はどんな顔をしていたらいい? どういう気持ちでいたらいい? 考えたいのに、いっぱいいっぱいで上手く思考が回らない。
「そろそろお風呂入る?」
「おっ、ふろ……さ、先どうぞ」
声がうわずってしまった。柊が入っている間に少しでも落ち着きたい。
そんな緊張が分かったのか、私の頭をポンポンしてから、逃げないでねと言ってお風呂に入っていった。
「やっぱり……」
柊はそういうつもりなんだ。まったく、おちつくどころか、さらにドキドキしてしまうではないか。
しかも、ゆっくり入ってくれればいいのにシャワーで済ませたのか、落ち着く前に出てきてしまった。
とてもラフな服装なのに、濡れた髪がとても色っぽい。カッコ良さが増している気がする。
「速いですね……」
「美桜ちゃんはゆっくりしてきていいよ」
思わず見とれてしまっていた私に向かって、柊ははいっと紙袋を渡してきた。
「お風呂の後、これを着て出てきてね?」
私が袋を開けようとすると、柊が慌てて止めて来る。開けるのは、着る直前にと言われた。
「これって……?」
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