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第1章 ワンコは溺愛したい
「美桜ちゃん、こっちおいで?」
甘く誘ってくるこの低音ボイスに思わず縋りついてしまいたくなる。だけど今は――。
「仕事をしてください」
絶賛仕事中なのだ。私、小春美桜は隙あらば構ってこようとする社長――雪峰柊の専属秘書。二四歳という歳でなぜ専属に抜擢されたのかは分からないけれど、今となっては良かったと思っている。
そして彼は、現二八歳で若手社長として記事に取り上げられるほど有名人。身長が一八五センチもあり、話題の高スペック男子として人気者だ。ちなみに私よりも約三十センチ背が高い。その為、座っていても立っている私との視線がとても近かった。
「そんなつれないことを言わずに! ……ね?」
「……くっ。そんな甘えた顔をしてもダメですよ。終わるまで机から離れないでください」
甘えればなんでも許されると思ったら大間違いだ。私はそんな顔をされても、誘惑には負けない。社長に仕事をさせるのが私の仕事だから。
「じゃあ終わったらいいんだね? 終わったら美桜ちゃん補充するから。それじゃあ頑張ろーっと」
「えっ? ちょっと、社長!?」
そういう意味で言ったわけではないのに。しかも、補充って何をするわけ!?
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