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ふざけた感じでもなく、本気で心配してくれていることが分かる。
私は振りほどくこともできないまま、腕を引かれて建物の影に連れていかれた。
「ここなら人もいないし話してくれる?」
あのたくさんの視線を浴びながら話すのは難しいと思ったのだろう。それが柊の優しさで、嬉しいはずなのに私の気持ちは上がってこない。
これを言ってしまっても柊は呆れないかな? 面倒だと嫌いになったりしない?
私は怖々と柊を見上げる。
「大丈夫だから教えて? 誰かに意地悪されたの?」
そんなんじゃない。誰かじゃなくて柊のせいなのに――。
分かってくれない柊に、私の想いが爆発した。
「なんでわからないんですか? 社長が……」
「うん? 僕が?」
「さっき、綺麗な女の人見てましたよね? 私みたいなチビじゃなくてとても綺麗な……あんな人なら隣にならんでもお似合いなんでしょうね」
淡々と、それでも言葉は強くなってしまう。言いながら思い出すだけでも、寂しさと悔しさでいっぱいになる。
「社長は私なんかよりもああいう人がいいんですか?」
「……っ、これは……!」
勢いで言ってしまったけれど、柊の反応が想像とは正反対だった。
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