第3章 ワンコは我慢できない

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「そういえばお腹すいたよね? 遅くなっちゃってごめんね」  たしかに、仕事が終わってからすぐに出かけてしまったから、ご飯はまだだった。だけど楽しさと興奮していたので、言われて初めて自分がお腹すいていたのだと自覚する。 「実はご飯用意してあるんだ」 「社長がつくったんですか!?」  仕事はできると思っていたけれど、まさか家事も完璧だったりする? いつもお弁当は買ったものを食べているのを知っているけれど、夜ご飯までは知らない。  それだと、私の出る幕が完全になくなってしまう。 「ふふっ。まさか……料理は苦手だから注文したやつだよ」  その返事を聞いて、少し私はほっとした。  柊にもちゃんと弱点はあったのだ。料理なら簡単なものは作れるから、今度作ってあげたら喜んでもらえるかもしれない。  そんなことを密かに考えながら、柊の家の中に入った。 「おじゃまします」  なんだかんだ、家に来るのは初めてだ。どんな家なのだろうと気になって、キョロキョロと色々なところを見てしまう。 「美桜ちゃん、こっち」  リビングに案内されると、テーブルの上にご馳走が乗っているのが見えた。  しかもまだ温かそうだ。どうして? 注文したんだよね?
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