第3章 ワンコは我慢できない

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 普通、もう冷えてしまっているんじゃないの? 「帰ってくる時間に合わせて届けてもらったんだよ」  さすが社長だ。そんなことができてしまうなんて。聞いてみると、ここの管理人さんが運んで用意してくれたらしい。  そんなことまでしてくれるんだ――。 「冷める前に早く食べちゃおう」  手を洗って、コートをハンガーにかけてから私たちは並べられている料理の前に座った。 「すごい量……」  どれも美味しそうだけれど、色んな種類がありすぎて食べきれなさそう。とてもふたり分には見えない。 「残してもいいよ。明日も食べればいいし」 「そうですよね。私、これが食べたいです」  せっかくだから美味しくいただくことにしよう。全部気になっていたので、全て少ずつよそって食べた。  料理はどれも美味しいのだけれど、時間が経つにつれてこの後のことを考えてしまい、どうしても緊張してしまう。  初めてのお泊まりで、しかも柊の家。この流れで何もしないなんてことありえない。  考えるだけでも顔が暑くなってくる。  実は今まで、一度も手を出してこなかった柊。本人も今日は手を出すつもりで私を呼んだのだろう。
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