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やる気になったら終わらせるのが早い柊は、上機嫌で机に向かっている。仕事はできるくせに、自分からやろうとしない。隙あらば私に構ってくる。そしてご褒美をねだってくるのだ。
「ふふふっ。ナイスよ美桜ちゃん」
「先輩……あとが怖いんですが……」
周りからしたら仕事をしてくれる社長の方がいいだろう。その分定時で帰れる確率が上がるから。
だけど、そのために私を犠牲にするなんて……。それが当たり前のようになりつつあるのだから困ったものだ。
「まぁまぁ、美桜ちゃんだって嬉しいでしょ?」
「そんなことっ……!」
ないとは言えなかった。確かに、私だって本気で嫌なわけじゃない。だけどここは職場であり、人前なわけで――恥ずかしさで顔が真っ赤になってしまう。
「ちょっと、僕の美桜ちゃんいじめちゃダメだよ? 美桜ちゃんは僕のだからね」
「ふぇ!? ちょっ! 社長っ」
そんなに堂々と言わないでほしい。恥ずかしいから。
私は自分のデスクに戻り、ただでさえ小さい身体をさらに小さく丸めてパソコンの影に隠れた。
「ふふっ。相変わらずの溺愛っぷりね」
先輩は見ていて楽しいわと微笑んでいる。
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