98人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
反対をするとか文句を言う前に、みんな私たちのこの関係を楽しんでいる気がする。たぶん、私の思い違いではないだろう。
そして当事者である柊もまた、この関係を存分に楽しんでいた。
「さぁ、終わったよ! 美桜ちゃんおいで?」
本当に終わらせたんだ。しかも、たったの30分で。こういう時の仕事量が普段から出せたらもっと楽なのに、柊は全力で私に構うことを優先してくる。
「ほら、行ってきなさい。これはやっておくから」
先輩にも後押しされてしまい、私は渋々と立ち上がり柊のもとに近づいた。
「はいっ。ここ来て?」
「……」
きっと柊は、私がその声に弱いことを知っていて言っている。
まるで、他の人なんて誰もいないかのように、その瞳には私しか映っていない。それが嬉しくもあり、恥ずかしくもあり、とても複雑だ。
「ご褒美、ちょうだい?」
「っ……! 少しだけ、ですよ?」
断れない私はその誘いに乗った。椅子に座りながら両手を広げて待っている柊の前に立つ。そして次の瞬間、私は膝の上に横抱きで抱き上げられていた。
「ちょっ! 社長、離してください」
抜け出そうともがくけれど、そんな意味がないほどすっぽりと抱き抱えられてしまっている。
最初のコメントを投稿しよう!