第1章 ワンコは溺愛したい

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 これだから、背の高い人には叶わない。小さい私はなすすべもなくなってしまう。 「あーっ、もう可愛すぎる……っ。このまま食べちゃいたいくらいだよ」 「きゃっ! もうダメです!」  私の精一杯の力でグイッと押し返すと、やっと離してくれた。もちろん、柊が本気で離そうとしなければ、私なんかの力で叶うはずがない。  柊はいつも私の様子を見て、加減を調節してくるのだ。無理にしてくることは絶対にない。 「ご褒美タイム、もう終わり?」  この声に負けてはダメだ。私は自分にそういい聞かせて、仕事に戻るように促した。 「あっそういえば美桜ちゃん、今度の休み暇?」 「もちろん暇ですけど? それよりも早く仕事をしてください」 「そう、良かった。じゃあその日は空けておいてね」  何事もないふりをして私は返事をする。いつも突然のくせに、前もって空けておいてと約束してくるなんてめずらしい。  もちろん、私だってその日が何の日か分かっていて空けてあるのだけれど……。 「何かあるんですか?」  そんなのしらばっくれて聞いてみる。分かってるなんて、期待しているみたいで恥ずかしいから。 「えー? 内緒?」  だけど、柊は知らないなら言わないと教えてくれなかった。
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