第2章 ワンコは嫉妬されたい

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 だけど、こんなに嬉しそうにしている柊に、今日は無理ですと断ることはできなかった。 「……はい」  私は必死に今日何を持ってきていたか、カバンの中身を思い出す。メイク道具はあるし、化粧品などはコンビニで買ってもいい。たぶん必要最低限なものは何とかなるはず。  だって、前日の夜から誘われるなんて、きっとそういうことだろう。この流れで一度家に帰されて、明日また会うなんてことはしない。ふつうならこのままお泊まりの流れだ。  ドキドキするなという方がおかしい。  カチンと緊張で固まった身体のまま、自分のデスクでカバンを抱えて座り柊の仕事が終わるのを待った。  今日は一切ふざけず真面目に仕事をしていたから何かあったのかと思ったけれど、きっとこのために集中していたのだと今になって分かる。 「よし、終わったよ。おまたせ」 「は、はいっ」  いつの間にか柊が私の前で手を差し出している。思わずその手に重ねて、勢いよく立ち上がった。  ぎゅっと握られた手を見つめてから初めて、スムーズにエスコートされたことに気づく。 「あの、ここ会社……!」 「みんな僕たちのことを応援してくれてるし、仕事は終わってるんだから大丈夫だよ」  自信満々にそう言って。
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