第2章 誘惑はいっぱい

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第2章 誘惑はいっぱい

「夏目、聞いてくれるか!? 俺の妻がな――」  職場でも話題はクリスマスのことでいっぱいだった。  声がでかいことで有名な雅紀と仲の良い上司が、ウキウキしながら話しているのが聞こえてくる。いつもなら聞こえないふりをして仕事を続けるけれど、今回だけは手を止めて耳を傾けてしまった。聞いておかなければいけないような気持ちになったのだ。 「クリスマスプレゼントに毎年ケーキを焼いてくれるんだ!」  ケーキ? プレゼント……?  そういえば、一緒に過ごすのかどうかしか気にしていなくて、プレゼントのことをすっかり忘れていた。イベントの時にデートしたり一緒に過ごすなら、プレゼントは必需品だろう。  なのに私の頭の中からは、すっぽりと抜け落ちていた。もう数日しかないし、25日のクリスマスまでは連勤で、イブも仕事だ。休みもないから買いに行く暇もない。適当なものですませるのもどうかと思うし……。  今の話を参考にさせてもらって、私もケーキ作ってみる? ケーキを作るのは初めてだけど、料理は嫌いではないからそんなに酷いものにはならないはず。材料さえ買えば、あとは調べながらできるだろう。
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