第2章 誘惑はいっぱい

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 周りに隠して欲しいと言ったのは私だけど、一緒に過ごしたくない訳ではないのに。  プライベートならふたりきりだし、バレることもない。  仕事終わりの飲みに、三人では行ったりはするのに、ふたりでデートはまだ誘われたことがない。告白されたのだって、ムードも欠けらもない、休憩室で昼休みに会った時だったから。  他の人が出ていって、たまたまふたりきりになった時突然言われたのだ。 「俺、お前のこと好きだわ……俺のモノになって?」  元々、雅紀のことは嫌いではなかったし、気が合うから一緒にいて楽しかった。だから私も“はい”と返事をしてしまった。だって、こんな告白の仕方――。照れているのに、言葉は強気なんて、思わずきゅんとしてしまう。  だから、どうして雅紀が私のことを選んでくれたのか詳しくはまだ知らない。でも、私は告白を受けいれたことを後悔なんてしていなかった。  私だって、雅紀のことを好きになっていたから。  こんなに好きだと思っているのは私だけなのかと寂しくなる。いつも変なところでちょっかいかけて来るくせに、こういうところでは誘ってこないんだから……。
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