第1章 指先のイタズラ

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 仕事終わりに飲みに行ったりもする。  だからこそ、話しやすいのかもしれない。それなのに、私たち二人が付き合っていますなんて、このタイミングじゃやっぱり言えない。  そんな私の考えを知ってか知らずか、雅紀も普段はただの同期として接してくる。 「ちょっと待て、まだ仕事中だから。その話は今夜聞いてやるから今は待て! な、美園?」 「う、うん」  いきなり私に話を振られて、変な返事をしてしまった。だけど、特に不審には思わなかったのか茉依は絶対だから、最後まで聞いてよと約束していた。 「はぁ、分かった。聞いてやるから仕事定時で終わらせろよ」 「それはもちろん」  私を置いて、二人で勝手に話が進んでいく。二人が定時で終わらせるということは、私も終わらせなくてはいけないという事で……。  私は机の上に積み重なっている、今日中に終わらせなくてはいけない書類を見て小さくため息をついた。 ◇◇◇ 「瑠花、終わった?」  定時の合図が社内になった瞬間、茉依が片付け始めて席を立った。 「終わったよ。今準備するね」  あんなにあった書類はどこに行ったのかというくらい、綺麗さっぱりと片付いている。
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