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私だけ残業して、茉依と雅紀がふたりだけで先に行ってしまうのが嫌だったから頑張って終わらせたなんて、誰にも言えない。
そんな小さな嫉妬を知られたくない。私は仕事用のカバンに必要なものだけをしまい、茉依と一緒にオフィスを出た。
「夏目くんは終わったのかな?」
オフィスにいなかったから、どこかで打ち合わせでもしていたのかもしれない。
私はキョロキョロしながら、雅紀の姿を探す。
「あの夏目に限って、残業はないでしょ……。入口で待ってれば出てくるよ」
雅紀は優秀だから、仕事もいっぱいある。それでもこなしてしまうのだから、上司からも慕われていた。
スマホを見たけれど、雅紀からの連絡は来ていない。だからきっとすぐ来るだろうと思い、私たちは会社が入っているビルのエントランスで待つことにした。
「……あの子はきっとデートでもするんだろうね。それでそのままお泊まりしてイチャイチャするんだ……」
置いてあるベンチに並んで座っていると、仕事が終わって帰る人の中に、社内一可愛いと有名な子が通った。直通関わることはあまりないけれど、噂でよく聞いているからどんな人物なのかは知っている。
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