第1章 指先のイタズラ

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第1章 指先のイタズラ

 もうすぐ、一年で一番カップルが増える季節がやってくる。そう、クリスマスだ。街の中はイルミネーションが増えて、夜はライトアップされている。  周りがウキウキしている中、私――美園瑠花は今年はどうなるのだろうと密かに心を踊らせていた。いつもはごく普通の日常と同じように過ごす、代わり映えのない一日。だけど今年は少し違うだろう。そう思いたい。  というのも、私には同じ会社に付き合っている人がいるからだ。まだ付き合って半年……初めてのクリスマス。初めてのイベントに気分が上がってしまうのは仕方のないことだと思う。  ちなみに、付き合っている彼は同期の夏目雅紀。なぜ私なんかと付き合っているのだろうと思うくらいのイケメンで、仕事もできる人気者だ。 「クリスマスかぁ……瑠花はどうするの?」 「ま、茉依、いつも通り過ごすに決まってるじゃん」  仕事中なことを忘れて、思わず考え込んでいたら、同期の鳩原茉依に突然聞かれた。  集中していないことがバレてしまったのだろうか……。ちょうど考えていた内容だったため、ドキッとしてしまったのはバレていないよね?  私なんかが雅紀と付き合っていると社内に知られた日には――考えただけでも恐ろしい。
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